アンドレア・サーリ - ミシュラン星付きレストラン、イタリア人シェフ
ミシュランの星を得ることは、シェフのたゆまぬ努力を讃える評価として最高峰と言えるでしょう。創造性、才能、最高品質を保っていくレストランとしての努力を讃えた称号です。
星を1つ得ることはシェフにとって大きなストレス、または苦悩と言われます。素性の知られていないミシュラン審査員が突然レストランを訪れ、その上食事を楽しんでもらわなくてはいけないのですから。
しかしイタリア人シェフ、アンドレア・サーリは極めて穏やかに星を維持しているように見えます。2002年にオープンした最初のレストランは、わずか開店数年で星1つを獲得。リグリアにある現在のレストランはたった6ヶ月でミシュラン審査員に評価されました。
彼の冷静さの秘訣は、リグリアのヒルや渓谷でライドして過ごす時間にありそうです。食の芸術と同等の熱意をサイクリングに注いでおり、この2つは欠かせないものであると彼は話します。
エスケープするためだけにライドをするわけではありません。コート・ダジュールを拠点とするプロサイクリストの友人達と年中ライドをすることを習慣としています。年間走行記録は25000キロ以上。プロのサイクリストになるべきかもしれませんが、本業は違います。
コンピュータープログラミングを学んでいた3年間は、他の夢がありました。インペリアでレストラン業を営んでいた父親に自分も料理をしたい、と伝えたのです。プログラミングの道を去り、シェフになるためのトレーニングを積み、計り知れない努力が続きました。
2002年に彼の夢は実現し、30席の小さなレストランは常に満席。サーリと同じ熱意を持った若いチームがキッチンとダイニングルームで活躍。テーブルではギャラリーのアート作品のような一皿が次々と運ばれてきます。花火のようなカラーディスプレイ、香り、風味。
シェフとしての仕事にサイクリングがどのように影響を与えているかを聞くと、シェフになるために去ったプログラミングの世界との驚くべき比較を話してくれました。彼の脳はデータベースのように、時間と共に香りや風味を驚愕するような正確さで記録していったというのです。
彼はメニューを創造するために実際に香りを嗅いだり味わうことは必ずしも必要ではなく、頭の中で素材を組み合わせることができるのです。山でや地中海でのライド中は新しいメニューを思い描くのに最適な時間。スピードに乗った感覚の探検。
バイクライドのスピードは感覚を呼び起こすのに完璧な機会。突然鼻に入るヒルにあるキッチンからの香り、思考、景色、感覚はアイディアを生み出し、新しい花火のようなディスプレイを創り出します。キッチンに戻り、脳にあるデータベースを駆使してアイディアをプログラミングするのです。
サーリのレストランでは、シーフード、新鮮な野菜、ハーブ、を中心とした地中海の伝統に基づき地元の食材を使ったメニューを提案。マーケットスクエアや角のお店、近所の農家など、材料はレストラン近辺で手に入るものを使用しています。彼の妻であるアレッサンドラは繊細な対応で訪れた客を迎え、洗練されたレストランの中心は温かい家族的なムードが漂います。
穏やかな雰囲気と小さなチームがミシュランスターレストランの成功の秘訣と言えそうです。彼のレストランで食事をするということは、壮大なサイクリストの家族に属するということでもあります。シェフがテーブルに現れた際には彼の料理の腕前について話すだけでなく、サイクリングについても聞いてみてください。彼の目は見る間に輝き、レストランが獲得したスターではなく、リグリアのヒルや渓谷に輝く星で満たされるでしょう。
ピエール・レオポール。
ピエールは、遺伝の基本的なメカニズムを研究するのに使われる小型のショウジョウバエ専門家です。研究室を出ると、彼にとってサイクリングは欠かせない活動。ライドと研究の絶妙な相互作用について語ります。