モナコでアーバンガーデニング

ニースの港から数キロ離れたモナコが今日の目的地。世界最小国の一つですが、サイクリング界で最大のレジェンドPeter Sagan、Primož Roglič、Cadel Evans、Geraint Thomasの故郷です。

パリ〜ニースレースで有名なルートである、エズ峠を越えてモナコへ向かうのが今日の予定。サイクリストであり登山家であるRaniが、人に知られていないグラベルルートを進みます。

ROTM November
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Raniは大学で土地の活性化における修士号を取得中の研究者。Jessica Sbaragliaが始めた有機農業専門のスタートアップ「テール・ド・モナコ(Terre de Monaco)」によりモナコ中の屋上に野菜畑が作られた事例のように、革新的な解決法を常に探究しています。

マントンにランチタイムまでに到着し、車の通らないバックカントリーロードを進む計画。最初の休憩はヒルサイドにある、オリーブの木に囲まれた中世の村ゴルビオ。天気は晴天、地中海を望むパノラマ景色を堪能することができます。テュルビーの噴水でエズ峠後の乾いた喉を潤し、冒険を続けるべくビドンに水を補給。

10キロ進むと、ディープブルーの海とのコントラストが美しい真っ白なモダン建築が際立つ、崖の端にバランスを取って立っているかのように見えるMaybourne Riviera高級ホテルがあります。美しい地形を変えてしまったことはいつの日か許されるかもしれませんが、建築物は今のところ奇妙な印象を与えています。マントンに向けてフルスピードで下降し、最終的に30分後モナコに到着。

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フランスと地中海との境界を持つモナコは世界で最も人口が密集している場所であり、住宅土地を広げる方法はただ一つ、上向かうのみ。モナコのタワーは高さを増し続けています。小さな立憲君主制国モナコは、4万人の住民のうち3人に1人はミリオンネアという世界で最も高く裕福な国として知られています。Raniは世界で最も高級なマンションでありモナコの地価現状を表すオデオンタワーの下で、アーバンガーデナーJessicaに会いました。モナコは農作業に適した場所とは言えなさそうですが、彼女の屋上アーバンガーデンは450平行メートルあり、フルーツや野菜、食用花、ハーブ、鶏、蜜蜂を育てています。他に類を見ないこのガーデンは、Raniの興味を大いに引きました。

「テール・ド・モナコ」創業者のJessicaにとって不可能なことはありません。現地のビジネスとクラウドファンディングのサポートにより、2016年にビルの屋上と高級ホテル屋上でアーバンガーデンを製作。2021年には5箇所にガーデンは広がり、1600平方メートルで栽培中、収穫される農作物は4000キロ。農作物はビルの住民に販売されたり、屋上ガーデンのある大規模ホテルのミシュランスターレストランで使用されています。庭で採れたものはすぐに料理場へ。

何より感銘を受けるのは、小さなアーバンスペースを活性化させ、農薬を一切使用しない有機栽培とパーマカルチャーを実現させたユートピア的実話。都会での農業を発展させ、サステナブルなライフスタイルを実現させるモデルだと言えるでしょう。

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Jessicaの野望はアーバン農業に限られず、モナコの学校に通う3000人の子供達が毎年屋上ガーデンで農業について学んでいます。モナコの病院屋上にあるガーデンは患者の精神的支えになり、そこで仕事をすることを選ぶ患者も多くいます。彼女はセミナーを開いてミシュランスターレストランのシェフと話し合い、サステナブルなアーバン農作物を取り入れる案を広げています。ベルギーにある巨大なアウトレットセンターの10,000平方メートルもの屋上スペースでのガーデンプロジェクトも始まっています。

「今では3人でビジネスを運営しています。過去5年間で初めて1週間の休暇を取りました。結果を出すためには努力を惜しまず自己犠牲は避けることができません」とJessica。

サステナブルなアーバン農業は大学のコースで取り入れるべき革新的な経済モデルであるとRaniは感じ、Jessicaを大学に招き体験を生徒と分かち合う計画を立てています。

ニースに戻ると、美しいコート・ダジュールの秋景色は終わりに近づいています。バース・コーニッシュロードでスピードを出して走り、光り輝く夕陽に押し寄せる海の波を堪能。

今日のライドはただのライドではありませんでした。夢を見るチャンス、現実を再思考する機会、住む環境をいかに変化させるか。

フランスの博物学者であり探検家のテオドール・アンドレ・モノの言葉が響きます。

「ユートピアは実現不可能ではなく、実現不可能にされたのです」

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